林檎の木
レーナはベルリンに壁のできる数年前に生まれた旧東独の少女。両親の諍いの絶えない家を逃れ、夏には川向こうの祖母の家を訪ねた。林檎の花が満開で、他の木の白い花と違って林檎のピンクの花は人肌の色、だから人間により親しいのだ--と語る祖母。可愛がっている人形の目を取り出し、邪悪からお前を守るお守りだ--と渡した。時は経ち、その地にできた林檎農園の開拓に来た彼女は、元水道工夫の青年と恋をし結婚。ところが新居の向かいに住む農協組合長の、病気の妻の面倒を見るうち、レーナは言い寄られ、嫉妬深い夫と仲違いしたのをきっかけに関係を持ってしまう。西側にパイプを持つ組合長は彼女に駆け落ちを持ちかけるが、それは公安を欺く囮で、案の定、夫に密告されたレーナは一人捕まる。そして、夫とは違う相手の子供が生まれ、夫婦の仲は完全に冷えきる。いつしか壁は崩れ、組合長を頼って西に出たレーナと息子は相手にもされず、故郷に戻り、そこで暮らそうと決意するのだが……。