この世で俺/僕だけ

(C)2014「この世で俺/僕だけ」製作委員会
かつてバンドを組み、パンクな魂と共に生きていた伊藤博。彼のこころにはいまも「弾丸アームストロング」という曲が鳴り響いているが、現実は、上から押しつけられる仕事を淡々とこなす、中年サラリーマンのしがない日常が転がっているだけだった。仲間と一緒に、カツアゲをつづけている不良高校生、黒田甲賀。彼の根底にあるのは、警察官の父親、晃司への屈折した想いだったが、それを吐き出す機会はなかなか訪れなかった。 縁もゆかりもないふたりは、けれども、ある朝、同じテレビ番組で、ある「ラッキーアイテム」に出逢う。伊藤は、その「ラッキーアイテム」に従って、コンビニの前に停めてあった車を強奪。それを「感じた」甲賀も、突き動かされるように、バイクで車を追った。甲賀は伊藤を捕まえ、車の主に、車を返そうとするが、車の後部座席に置かれた段ボール箱に赤ん坊がいたことから、異変を感じる。 車の主である、怪しげな男は、ほんとうにこの子の父親なのか?取り引き現場に現れた、強面の男たちから、直感で逃げ出す伊藤と甲賀。ふたりは、やがて、赤ん坊が、この街の再開発に反対する政治家、大隈泰三の子供であり、彼の立候補を阻もうとする市長、犬養亨の指示で、ヤクザ、浜口英雄が行なった偽装誘拐であることを知る。 このままでは、自分たちが誘拐犯に仕立て上げられてしまう。思い切って晃司に連絡したものの、警察さえも味方にはなってくれないことを直感した甲賀は、伊藤と共に、自力で大隈の許に、赤ん坊を届けることを決意。こうして、伊藤と甲賀の、果てしない逃避行がはじまった。

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